あらすじ
ある春の日、旅人が茶店に立ち寄りました。「ここは、一休みするにはもってこいの場所だな。」旅人は周囲の美しい新緑を眺めながらつぶやきました。川のせせらぎが心地よく聞こえ、ふと視線を向けると、岸で子供が釣りをしていました。しかし、その子供はじっとしているだけで、全く釣れていないようでした。
「やあ、いい天気だね。釣りは楽しいかい?」旅人は我慢できずに声をかけました。子供は少し沈んだ声で、「こんにちは。釣りは好きなんだ。」と答えました。
「そんなにがっかりしなくてもいいよ。饅頭でも食わないか?おごってやるよ。」旅人は優しく言いました。
「本当、おじさん!親切なんだな。ありがとう!」子供は目を輝かせました。旅人は子供を茶店に連れて行き、「饅頭三つと、お茶一つ。私のおごりで。」と注文しました。
子供は饅頭をほおばりながら、「今日は普通は二匹釣れるけど、今日は三匹釣れたよ。」と得意げに言いました。
旅人は不思議に思い、「でも、ビクには一匹も入ってないじゃないか?」と尋ねます。すると子供は指をさしながら、「おじさんが、今日の三匹目なんだ。」と答えました。
旅人は苦笑しながら、「私が?お前の獲物?うーん、お見事!」とその罠に気づきましたが、子供の貧しい様子が気になり、「ところで、お前さん、どこに住んでいるんだい?」と優しく尋ねました。
「もちろん、いるよ。あそこにいるのが僕のお父さん。」子供は元気に指を指しました。「お母さんもあそこにいるよ。おいしい饅頭を作ってくれるんだ。」
お母さんは笑顔で旅人に頭を下げ、「本当にありがとうございます。またどうぞお出でください。」と感謝の意を示しました。
旅人は、その瞬間、全てが明らかになりました。子供に完全に騙されてしまい、旅を続ける元気が一瞬で消えました。結局、子供が釣っていたのは魚ではなく、人間だったのです。彼はただ、ひと釣りを楽しんでいたのでした。

















































