二人の僧徒然草
ふたりのそう

2024/10/18(金)

二人の僧の画像

あらすじ

むかし、むかし、京の都に貧しい男とその妻がおりました。ある日のこと、妻は貧乏暮らしを夫にぼやきました。

「貧乏暮らしはもううんざり。食べるものもろくにないし、いつも同じ着

物。新しいのを買ったこともない。物乞いの方がまだましだわ。こんな惨

めな生活はいや、もうたくさん。あなたが盗人か追いはぎにでもなってくれたら、うれしいわ。新しい着物が買えるわ。」

「馬鹿なこと言うのはよせ!そんなひどいやつにはならん。いいか、世の中には貧しい人が沢山いるんだ。中には俺たちよりも貧しいものもいるんだ。」夫は妻をたしなめまし

た。

「じゃ、あなたとは別れたいわ。別れましょう。金持ちでも見つけて一緒になるわ。」

それでも夫は妻を大事にしていたので、妻のいない生活は考えられませんでした。毎日妻の不満に

頭を悩ませていました。自分に嫌気がさすのではないかと不安でした。

ある晩のこと、綺麗な着物を着た婦人が通り過ぎました。我を忘れ、その婦人を殺害し、着物と金

銭を奪い取りました。急いで帰宅し、妻に言いました。

「追いはぎになってくれ、と言ったな。女を殺して、着物と金を持ってきた。俺はとんでもないこと

をした。」

しかし、それを聞いた妻は驚くどころか、その綺麗な着物を見て、うれしそうでした。それでも男

は妻を愛しく思っていましたが、ここに至って妻に対して違和感を感じるようになりました。

翌日、妻はその着物を着て出かけました。身の毛がよだつような出来事が起こりました。家を出た

直後、妻が誰かに殺されたのです。

「俺がしたことの天罰に違いない。」

男は出家するために高野山に登りました。日々経を読み、自分が手にかけた女の人の供養をしました。

ある晩、出家したばかりの僧が訪ねてきました。二人は互いの身の上話をしました。客僧は僧に尋

ねました。

「どうして出家したのか教えて下さい。私の方は、以前京に住んでいましたが、災難がありまして思

い切って出家しました。」

「私も京にいました。しかしとんでもないことをしでかして出家しました。」と僧は客僧に答えました。

「差し支えなければ、もう少し詳しく話してもらえないでしょうか。絶対に他言しませんから。」

僧は自らの罪(つみ)について話しました。客僧は、関心を示し、たて続けに尋ねました。

「いつのことですか?着物の色は?歳の頃は?」

僧は、思い出すまま語りました。客僧は、途中で何度も頷きながら、聞き入りました。僧の話が終わ

りになろうとすると、客僧は僧に言いました。

「何と言うことだ!あなたが手にかけたのは私の妻に違いない。実は、私もちょうどそ

の翌日出会った女の人を殺してしまいました。その人は妻の着物を着ていたのです。い

つ、どこで、手に入れたんだ、と聞いても何も答えずに逃げたので、追いかけて一突き

にしたんです。それで、出家することにしたのです・・・あの一連の忌まわしいこ

とがなかったら、出家することも、仏典に触れることもなかったでしょう。すなわ

ち、あなたのおかげで私は出家できたのです。亡き妻達のために二人で供養いたし

ましょう。」

二人は手を取り合って泣きました。二人の僧は、山にこもり、厳しい修行をつみました。

徒然草・改


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