あらすじ
唐の時代の中国に、慶植(けいしょく)という男がいました。
慶植にはとても可愛いい娘がいましたが、十歳の時、はやり病で亡くなってしまいました。父と母の悲しみは計り知れないものでした。
二年後、慶植は新しい任地に赴(おもむ)くように命じられました。赴任前に、
友人や親戚を晩餐会に招こうと思い、市場で若い羊を買いました。
その夜、慶植の妻は不思議な夢を見ました。夢の中に亡くなった娘が現われ、
こう言いました。
「お母さん、前世では、私はお父さん、お母さんに甘やかされて育ちました。今、私は白い羊にされ
てしまいました。お父さんはそれと気づかずに、昨日その白い羊を買いました。明日、私は殺されま
す。お母さん、どうか私の命をお助け下さい。」
翌朝、妻は使用人にきつく申し渡しました。
「この羊を殺してはなりません。夫には帰ってきたら訳を話します。」
慶植は家に戻ると、晩餐会の準備が進んでいないのを見て、腹を立てて使用人に言いました。
「もうすぐ客が来るというのに、どうしてまだ料理ができていないのだ?」
「奥さまが、『この羊を殺してはなりません。』とおっしゃいましたので、羊を殺すわけにはいきませ
んでした。それで、祝宴の準備を中断したのです。」
慶植は、腹を立てて言いました。
「馬鹿なことを言うな。すぐに殺せ。」
慶植は、角を縄で縛って梁(はり)に羊を吊るすよう、使用人に命じました。
丁度、その時、客たちがやって来て、可愛らしい女の子が束ねた髪の毛で梁に吊るされているのを目
にしました。
「私は、この家の娘でしたが、今は白い羊として生まれ変わっています。もうすぐ殺されます。どう
か助けてください。」
客たちは女の子が蚊のなくような声でささやいているのを耳にしましたが、使用人にとっては、ただ
の羊にすぎませんでした。
「料理が出来ていなければ、旦那様からお叱りを受けるに違いない。」と使用人は言いました。
とうとう使用人は、羊を打ち殺し、焼肉用にさばきました。
客たちは、その肉を見て、一口も食べず帰ってしまいました。
後(のち)に、客たちから、何も食べずに立ち去った事の次第を聞いて、娘の父は衝撃を受け、苦し
み悶(もだ)えました。それからというもの、慶植は何も食べようとせず、飢え死にしてしまいまし
た。原作:宇治拾遺物語(167)「ある唐人、娘の羊に生まれたるを知らずして殺すこと」
















































