あらすじ
新田保は町工場でひっそりと働く無口な青年だった。機械音に包まれる毎日、彼は自分の存在を確かめるかのように、古びたテープレコーダーで自分の声を録り始める。最初は単なる自己確認の行為に過ぎなかったが、深夜の工場がひっそりと静まる頃、再生ボタンを押すたびに、どこか異質な低い囁きが混じり込むことに気づく。
温かい心を持つ同僚の工藤は、何度も保に話しかけようとするが、保はただテープの再生に没頭する。録音された声は次第に、彼自身のものではなく、過去にこの工場で命を落としたと噂される職人の、忘れられた叫びのように変わっていく。保はその声に導かれるかのように、自分の内面と向き合い、心に秘めた罪と悲しみ、未完の約束が一つ一つ明るみに出るのを感じる。
そして、ある晩、保は決定的な衝撃を受ける。テープの中の声が、まるで告白するかのように、工藤すら知らなかった工場での暗い因縁―かつての同僚が残した真実―を語り始めたのだ。保はその瞬間、自分が孤独と沈黙の中で作り上げた“言葉のない部屋”に閉じ込められていたことに気づく。やがて、彼は低く「これで全てが明らかになる」と呟くと、音のない闇の中に溶け込むように姿を消した。残されたのは、ひそやかに工場内を漂い、語られることのなかった真実の声だけであった。

















































