あらすじ
吉永真理子は、いつも控えめな服装で人目を避けるように生きていた。しかし、彼女には誰にも話せない秘密があった。ほめられると、無意識に近くにあるささいな物に手が伸び、盗んでしまうという奇妙なくせであった。幼い頃から、褒め言葉が彼女の中にある未解決の渇望を呼び覚まし、いつしかその衝動は止められなくなっていた。
ある日のこと、真理子は静かなカフェで偶然、笹岡良平と出会う。彼は温かく、誠実な言葉で真理子の控えめな姿を褒め称えた。その瞬間、真理子の体は反応し、彼のテーブルの上に置かれていた小さなアンティークのペンダントに手が伸びてしまう。気づかぬうちに盗んだそのペンダントは、どこか懐かしい雰囲気を漂わせ、真理子自身も心をくすぐる何かを感じた。
その日から、真理子は自分のくせと向き合わざるを得なくなる。笹岡は何度も優しい言葉をかけ、彼女を安心させるかのように振る舞ったが、同時に真理子はその行動がもたらす不可解な運命の流れに気づき始める。彼女が盗んだ品々は、偶然にもひとつのテーマに沿ったものばかりで、どれもかつてある著名な芸術家が遺したとされる、散逸した宝物の一部であった。
調査を進める中で、真理子は衝撃の事実と向き合うことになる。実は彼女の一族は代々、『美に憑かれる呪い』と呼ばれる謎の宿命に囚われており、ほめ言葉がその呪いを呼び覚ます引き金となっていた。そして、笹岡良平こそが、その芸術家の隠された後継者であり、あえて真理子に接近して彼女の無意識の行動によって失われた宝物を取り戻そうとしていたのだ。
クライマックスで、真理子は自分が盗んだ最後のペンダントに刻まれた微かな刻印を発見する。それは一族の呪いを解く鍵であり、彼女のくせが運命を変える力であることを示していた。オチとして、笹岡は静かに告げる。「あなたのくせが、私たちに失われた芸術と家族の絆を取り戻させたのです」。真理子は自らの奇妙なくせを恥じることなく、むしろそれが未来へ繋がる奇跡であったと悟り、新たな一歩を踏み出すのであった。

















































