あらすじ
ある灰色の空が広がるある日の午後、北沢英子は近所のスーパーでいつものように買い物をしていた。必要以上にカゴに商品を詰め込み、どれを買えばよいのか迷っていると、ふと背後から柔らかな声が耳に届いた。「半分こしませんか?」振り向くと、そこには笑みをたたえた山岸緑が立っていた。戸惑いながらも、その提案に心が軽くなった英子は、半信半疑で了承する。
その日から、二人はパンや果物、そして時には日用品すらも半分に分け合う奇妙な習慣を始める。どんなに些細なものでも、半分にすることで互いの距離が縮まっていくような気がした。会話の中で語られる秘密や、過ぎ去った日々の影も、丁寧に半分に包み込むように共有され、二人の間には柔らかな絆が育まれていった。
ある日、ふたたび話題となったのは小さなインコの飼育だった。二人は交代で愛鳥の世話をすることに決めた。しかし、飼い始めたインコは普通ではなかった。どこか左右非対称な羽根の輝きや、二人の声を真似る不思議な才能。最初はその愛らしさに笑い合った二人だったが、次第にインコの行動には謎めいた気配が漂い始めた。
ある朝、英子がいつものようにインコの世話をしていると、突然、インコは檻の扉を自ら開け、勢いよく飛び立ってしまった。英子と緑は慌てて探し回り、ついに商店街の端にある古びた神社の境内でその姿を捉えた。境内には、半分だけ彫られた風変わりな石像と、脆くも刻まれた紙片があった。その紙片には、『全ては半分から一つに。君たちもそうなる時が来る』という不思議な言葉が記されていた。
衝撃を受けた二人は、これまでの「半分こ」に込められた意味を改めて考え始める。互いに物を半分ずつ分け合うことで守ろうとしていたのは、もしかすると分離ではなく、真の一体感への予兆だったのか。英子と緑は、これまでの習慣を見直し、今まで隠していた感情や記憶を、ありのままに全て共有する決意を固める。
その瞬間、ふと背後から軽やかな羽音が響く。振り向くと、飛んできたのは先ほど逃げ去ったインコ。今度は迷うことなく、二人の腕の中へと戻ってきた。インコの帰還は、ただの偶然ではなく、二人に与えられた最後の啓示だった。こうして、英子と緑は、互いの半分を合わせてひとつの全体となる新たな一歩を踏み出す。奇妙で温かな物語は、彼女たちの心が完全に一体となった瞬間に、静かに幕を閉じたのだった。

















































