あらすじ
牧村小夏は、ある夜、祖母からの夢に促され、祖父龍介の住む山里への道を進んでいた。道中、薄暗い森の中に突如として現れた奇妙な行列に足を止める。行列は、地元で「沼送り」と呼ばれる不気味な儀式の一環で、濡れそぼる沼地へと向かっていた。先頭には、顔面に人のような刻印が浮かぶ不思議な草、すなわち「じんめんそう」を冠した男がいた。その眼差しは冷たく、まるで生者の心を見透かすかのようだった。
小夏は恐る恐る後を追い、その薄霧に飲み込まれるような行列の姿を目にするが、すぐに消え去ってしまう。彼女は安堵と同時に、不安を抱えながらも祖父の家へ急いだ。家に着くと、懐かしい温もりに包まれるも、先の出来事を必死に語ると、龍介の表情は曇り、動揺を隠せなかった。
祖父は、静かな声で語り始める。実はかつて、彼自身も同じ「沼送り」の行列に遭遇し、そのとき夢幻の中で愛しき妻―小夏の祖母―の面影と、じんめんそうが交錯する幻を見たのだという。若き日の彼は、誰にも言えぬ秘密の儀式として、怨念を鎮めるために野にじんめんそうを植えた。しかしその行為が、いつしか呪縛となり、代償を求める怪異を呼び寄せることになっていた。
夜も深まり、風が村を切り裂く頃、再び「沼送り」の行列が祖父の家の前に現れる。行列の隙間から、一輪のしおれた花が床にそっと置かれると、霧の中から祖母の幻影が浮かび上がり、低い声で囁いた。「この過ちを乗り越え、新たな光を迎えなさい」と。龍介の瞳に涙が浮かび、長年背負ってきた苦しみと秘密が、一瞬にして解かれたかのようだった。
まさか、あのじんめんそうが、そして沼送りの行列が、先の罪と未来への和解を告げる使者であったとは。小夏はその衝撃的な運命の転換を目の当たりにし、家族に課せられた呪縛と決別するため、一歩を踏み出す覚悟を固めたのであった。

















































