盗聴レシーバーの怪
とうちょうれしーばーのかい

2025/3/26(水)

あらすじ

予備校に通う浪人生・沢田清は、日々の退屈な勉強から逃れるため、密かに盗聴レシーバーに心を奪われていた。夜の静寂の中、彼は古びた受信機を手に近隣の一室から漏れる私語や嘆きを楽しんでいた。そうしたある晩、清はいつものようにイヤホンを耳にあて、ふと耳を澄ますと、情熱と怒号が交錯する声を拾った。ひとりの人妻が「もう終わりにしましょう」と穏やかに告げると、もうひとりの男が激昂し「硫酸をかけてやる、殺してやる」と低い声で脅迫していた。その衝撃的な言葉に、好奇心と不安が同時に駆り立てられた清は、すべての会話を密かに録音する。翌朝、テレビは硫酸を用いた主婦殺人事件の生々しい報道を流し、現場は血と絶望に染まっていた。清は自分の録音が事件と関係しているのではという恐れに襲われ、何度も再生する中で、会話の隙間にかすかに混じる、自分自身のような冷たい囁きに気付く。さらに調べ進めると、その盗聴レシーバーはかつて、同じような惨劇に絡んだという噂があった。伝えられるところによれば、機器は所有者の心に潜む闇を呼び覚まし、運命さえも弄ぶ呪いの品とされていた。日ごとに異様な現象に悩まされる清は、次第に自らの記憶の断片が曖昧になっていくのを感じる。ある深夜、部屋に籠もり録音を聴いていた彼の耳に、普段は聞こえないはずの命令音が飛び込んだ。「硫酸をかけろ、殺せ」――その声は、自分の声に酷似し、あたかも無意識のうちに発せられたかのようだった。衝撃と自己嫌悪に苛まれる清は、ふと記憶の闇がよぎる。実は、事件当夜、自身の行動が黒い影となって現場に干渉していたのではないかと。盗聴レシーバーは、彼の内面に潜む怨念と狂気を呼び覚まし、知らぬ間に惨劇の一端を担わせていたのだ。警察の捜査が進む中、清自身もまた真実と向き合わざるを得なくなった。最後の夜、薄明かりの中で、受信機の小さなランプが不気味に点滅する中、清は鏡に映る自身の瞳に恐怖を覚える。その瞬間、低く囁く一言が室内にこだまする――「怪物」。清は、己の内に潜む闇と呪いの力に飲み込まれ、遂には自らが恐れていた存在、すなわち呪いに操られる怪物へと変貌してしまったのだった。


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