壁の小説
かべのしょうせつ

2025/3/26(水)

あらすじ

夜の帳が降りる頃、アメリカでプロファイリングを学んだ刑事・三神有紀は、とある精神病院の前に立っていた。院内では連続殺人事件の犯人とされる男が隔離され、有紀は真相究明のためその部屋を訪れる。院長の案内で重い扉を開けると、室内は薄暗く、焦げたような赤褐色の壁に無数の文字が刻まれていた。

その文字は、まるで未来をつづるかのように、有紀の一挙手一投足を記録しているかのようだった。『あなたは今、真実に迫る』『扉の向こうに逃れられぬ運命がある』など、刻まれた言葉は次々と現実の出来事となり、彼を混乱に陥れる。指先で文字を辿りながら、有紀はこれが偶然ではないと悟り、必死に意味を探ろうとする。

やがて、有紀は壁の予言に逆らおうと試みるが、その動き自体が既に刻まれた未来に沿って進むかのようだった。最も恐るべき瞬間は、最後の扉を押し開けたとき。扉の向こうから冷たい風と一瞬の閃光が飛び込み、有紀は意識を失う。

目覚めた時、彼の耳に低く囁く声が届く。壁に新たに刻まれた最後の一文――『あなたこそが、連続殺人の真犯人である』。その瞬間、断片的な記憶が一斉に甦り、有紀は自らが長年隠し続けた罪の重さに気づく。探偵として事件を追っていた彼は、実は自らの手で数々の殺人を引き起こしていたのだ。逃れられぬ宿命と真実に絶望した有紀は、壁の予言に導かれるように、己の罪と運命を受け入れるほかなかった。

こうして、有紀の物語は、己の闇に飲み込まれる衝撃の結末を迎え、息を潜める病院の中で静かに幕を閉じた。


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