あらすじ
冬の厳しい山中、斎藤一景は、恋人であり助手の明子と共に、最後の記憶を刻もうとした。出発前、斎藤は心の奥で明子への別れを決意していた。だが、凍える風と吹雪に揉まれ、二人は道に迷い、明子はその未熟な体が寒さに耐えられず凍死してしまう。斎藤は、少しでも彼女の美しさを保つため、遺体をテントの外にそっと安置した。
テントに戻り休息を取っていると、外から微かに足音が聞こえ始めた。最初は風の音かと思ったが、次第に足音は確かなものとなり、恐る恐るテントの外を覗くと、凍りつくはずの明子の遺体が、ぎこちなくも歩み出しているではないか。斎藤は恐怖と後悔に襲われ、思わずカメラを手に取る。彼女の動きは、かつて持っていた柔らかな表情と仕草をわずかに残しながらも、どこか哀しみを漂わせていた。
その不思議な光景に見入るうち、斎藤は次第に自分の体に異変を感じ始めた。全身を覆う冷たい感覚と共に、意識が次第に遠のく中で、彼は衝撃の事実に気付く。目の前に現れる“明子”の歩みは、実は自分自身の幻影であり、かつて生を謳歌していた斎藤自身が、この厳しい山の呪いによって既に命を失っていたのだ。
過ぎ去った愛と別れの言葉、そして自らの冷たい決断が裏目に出た結果、斎藤は自らを見失っていた。恋人と共に永遠に彷徨う“歩く死体”として、二人は生者の面影を残すことなく、ただ雪原の闇に溶けていった。山は、その無情な静寂の中で、二人の悲哀を永遠に刻み続けるのであった。

















































