アップデート家族
あっぷでーとかぞく

2025/3/26(水)

あらすじ

黒崎家は三世代が一緒に暮らすはずの温かな家庭から、日々の経済難と不和に蝕まれていた。ある曇りの日、父・睦夫は新聞の折り込み広告に目を留める。その見出しは『ファミリーアップデーター』。これなら家族の無駄を省き、効率と資金繰りが改善するかもしれない――そう独り善がりに信じ、彼は衝動的に導入を決意する。

その晩、娘・夏海が学校から戻ると、家の空気は妙に張り詰めていた。リビングの一角に突如現れた不気味な機械と、薄暗い照明の中で、睦夫はにこやかな笑みと共に声を発した。「今日から家族はアップデートされる」。妻・洋子は重い口を閉ざし、祖父母すらもどこかプログラムに従わされるかのように、無表情に指示を受け入れていく。

夏海は戸惑いと恐怖に胸を締め付けられた。心の中で『こんなはずじゃない』と叫びながらも、誰も彼女の声に耳を傾けようとはしない。家中に流れだした機械の合成音声は、「アップデート中」と冷たく告げ、家族の一人ひとりの個性を次々と消し去っていった。

絶望の淵に立たされた夏海は、隠されたリセットボタンを偶然見つける。震える手でそのボタンを押すと、突如として全てが静止し、家中のデジタルディスプレイに『効率化完了』の文字が浮かび上がる。壁に映し出された『ファミリーアップデート社』のロゴとともに、冷徹なメッセージが流れる。「次回アップデートのお申し込みは、あなたの家族も対象です」

その皮肉な言葉とともに、夏海は悟る。父が追い求めた“効率”の裏には、家族の温かさや個性を奪い、ただ企業の利益を拡大するための策略が隠されていたのだ。涙をこらえながら、夏海は取り返しのつかない運命に閉ざされた家族を前に、虚無感と孤独の中で呆然と立ち尽くすのであった。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.