あらすじ
昭和30年代の雨深い夜、走行する列車の最終車両に三人の男が偶然—orは必然か—集まっていた。向かい合わせに座るのは、厳しげな眼差しの猪首の男。彼のひそかな仕草の奥には、警察としての使命感と、何か重い秘密が潜んでいるようだった。隣に座る優男は、手錠が軋むたびに内心を抑えきれぬ不安を隠しながら、護送中の囚人としての宿命を背負っているように見えた。そして、対面に腰掛けるキザな男は、言葉巧みに笑みを浮かべながら、どこか計算された雰囲気で二人の間に不穏な空気を漂わせていた。
会話はほとんどなく、ただ互いの視線と時折交わされる低い声だけが部屋の静寂を破っていく。列車の軋む音とともに、三人の間には次第に疑念と緊張が走り始める。誰が本当の敵で、誰が味方なのか。麻薬取引を巡る暗躍の影が、彼らの存在に重くのしかかっていた。ふとした瞬間、車内の明かりが一瞬消え、緊迫の空気がピークに達した。その闇の中、三人は互いに問い詰め合うような眼差しを交わす。
そして、列車がとある無人駅に近づいたその時、場の空気は突如として一変する。窓の外に映る自分たちの姿が、まるで一つの鏡像のように重なり合い、第三者のような不気味な同一性を示し始めた。慌てた猪首の男がポケットから取り出した警察のバッジが、微かに揺れる光の中で輝いた瞬間、全てのピースがはっと繋がる。
実は、この三人は互いに独立した存在ではなかった。それぞれが、ひとりの男の分裂した人格に過ぎなかったのだ。護送される囚人としての自責、警察としての正義、そしてキザな男としての冷徹な合理性。それらは全て、一人の男が過去の麻薬取引で背負った罪と後悔が、自らの心を守るために生み出した仮面であった。列車の中で繰り広げられたあの不可解な駆け引きは、彼自身との戦いであり、真実を見失わぬよう必死で己を追い詰める過程そのものだった。
列車が停車し、扉が開いたとき、彼はただひとり、虚空を見つめながら立ち尽くしていた。幻のように消えたもう二つの人格を嘆く代わりに、彼は己の闇と向き合う覚悟を決めた。すべては、彼の壊れた心が作り上げた幻想に過ぎなかったのだ。

















































