友子の長い夜
ともこのながいよる

2025/3/26(水)

あらすじ

ある晩、田村友子は定期テストに向けた一夜漬けの準備を始めた。机の隅に目をやると、そこには普段は気にも留めない埃がちらほらと積もっていた。不思議な違和感に駆られた友子は、まず掃除をすることに決めた。小さな埃一つ一つを丹念に払いながら、部屋は次第に清々しい光を取り戻していく。

その最中、古びた引き出しの奥から一冊のマンガが顔を出した。忘れ去られていたはずの物語に心を奪われ、友子はページをめくるうちに現実の重圧を忘れ、物語の中へと没頭していく。さらに、台所から漂い始めた夜食の香りに抗えず、彼女は急遽、自分だけの小さな晩餐会を始める。

掃除、読書、そして夜食作りという無秩序な行為が、不思議な調和を見せる夜。時計の針は気づけば深夜を指し、夢と現実の境界が曖昧になる中、友子は自分の行動にただただ流されるまま過ごしていた。

そして夜明け。朝の柔らかな光とともに目覚めた友子は、机の上に散らばった掃除用具、読みかけのマンガ、調理中の名残を目にし、自分が一度も一夜漬けのための勉強に手を付けていなかったことを思い知る。途方に暮れかけたその瞬間、スマホに一通のメール通知が届く。そこには『定期テストは来月に延期されました』との一文が。

苦笑いせずにはいられなかった友子は、この奇妙な逃避行が運命のいたずらであったことを悟る。怠けた夜が、まさか明日の重い試練を回避する幸運へと変わるとは思いも寄らなかったのだ。こうして、友子の長い夜は、奇怪でほろ苦い笑い話として、後に語り継がれることとなった。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.