言う事を聞く子
いうことをきくこ

2025/3/26(水)

あらすじ

和泉朋子は小学校で勤める熱心な教師であった。ある日、新たに転入してきた生徒・正人は、何を言われても必ず「はい」と返事をする、非常に素直な子であった。最初はその従順さに安心したクラスメイトたちも、次第に正人の無条件の返答をからかい、嘲笑するようになり、いじめの対象とするようになった。朋子はそんな正人に心を痛め、なぜ彼はこれほどまでに「はい」としか答えられないのか、その内面に秘めた思いを探ろうと心に決めた。

放課後、ひとり教室に残る正人の姿を見た朋子は、彼の瞳に深い孤独と悲しみを感じ取る。調べを進めるうち、正人には幼い頃に家族を失うという過去があり、その喪失感に耐えきれず、言葉を失ってしまった事実が明らかになる。そして、彼の代わりに発される「はい」は、ただの従順な返答ではなく、家族の魂と繋がる呪いのような意味を帯びていたのだ。

事態はある日、クラス内で正人に対する暴言と罵倒が頂点に達したとき、奇妙な現象として現れた。正人が平然と「はい」と答えた瞬間、教室内に突風が吹き荒れ、机や椅子が宙に舞い上がる。眩い光が辺りを包み、まるで時間と空間が溶け出すかのような異変が発生した。朋子は必死に正人を救おうとしたが、その時、正人の悲しげな瞳はすべての真実を物語っていた。

最終的に、正人は深い哀しみをこめた最後の一言「はい」をつぶやいた。その声と同時に、教室全体は眩い光に包まれ、すべてが消失してしまった。後に朋子は、この出来事が正人の従順さに秘められていた呪いの終焉であり、彼自身と失われた魂たちが呼び起こした、戻らぬ現実の断片であったと語るのだった。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.