あらすじ
山崎は初の連載決定を目前に控え、かつての助手が突然辞めたことで焦燥に駆られていた。編集者・江田の紹介で迎えた新人助手、寺島ひなは、その上品な佇まいと柔らかな笑顔で、彼の心に一筋の希望を灯した。山崎は気づくと、作業の合間にひなの横顔を何度もスケッチするようになった。
ある日、ひなはふと小学生時代の記憶を語り始める。彼女が懐かしげに話すのは、かつての親友・小林摩子との楽しい日々。しかし、語られるたびに、山崎のスケッチには一瞬だけ、幼い影が混じるのを感じた。それは、明るい笑顔の裏に隠された、どこか哀しみを帯びた表情だった。
雨の降る夜、山崎のもとに謎の封筒が届く。中には古びた写真と『寺島』という文字が記された文書が同封されており、彼の描く肖像画は次第に不気味な雰囲気を帯び始めた。スケッチには、ひなの顔とともに、かすかにほのめかされるもう一つの存在――失われた記憶が宿るかのように。
遂に山崎は勇気を振り絞り、ひなに問いただす。すると彼女は震える声で告白した。実は、彼女こそかつて親友として慕われた小林摩子の魂が宿る存在であり、過去の悲劇と未解決の想いに縛られていたのだ。山崎が繰り返し描いたスケッチは、その魂の叫びと哀愁を無意識に映し出していた。
告白の瞬間、ひなの姿は次第に薄らいでいき、やがて雨音に溶け込むように消えてしまう。残されたのは、未完の原稿と、ただひと枚、哀しげな微笑みを宿す寺島の肖像画だけだった。現実と幻想の境界が曖昧になった瞬間、山崎は自らの描いた運命の真実を、永遠の記憶として刻むこととなった。

















































