あらすじ
朝の光が差し込む中、行雄はいつも通り目覚まし時計を止め、洗面し、朝の支度に取り掛かっていた。しかし、台所に降り立つと、父は新聞を手に動かず、母は黙って鍋の前に佇み、姉も言葉を発さぬまま凍りついていた。驚きと不安に駆られた行雄は、外へ飛び出すと、普段賑やかな街がまるで彫刻のように静止していることに気づく。時計の針は一点で止まり、風の音すら聞こえない異様な光景に、彼の心は次第に恐怖と孤独で満たされていった。
必死に手がかりを求めて歩み続ける中、狭い路地裏でひときわ輝く小さな装置に遭遇する。装置には「still」と刻まれ、赤いボタンがかすかな光を放っていた。ためらいと好奇心が交錯する中、行雄はついにそのボタンを押す決意を固める。ボタンを押した瞬間、微かな機械音が響き、世界が変わる予感がした。
次の瞬間、家族や街の人々はゆっくりと動き出すが、その動作はどこか機械的で、表情は虚ろだった。行雄は混乱し、ふと立ち寄った鏡に映る自分の姿に異変を感じる。そこに映るのは、かつての優しさや温もりを失った、冷ややかな瞳を持つ“もう一人の自分”のような存在だった。
突然、遠くのスピーカーから冷たい声が流れ出す。「あなたがボタンを押した瞬間、全ての存在は再起動され、あなた自身もプログラムの一部となりました。」その言葉に、行雄の心は凍りつく。自らの行為が、彼自身の存在すらも操作可能なものに変えてしまったのだ。
そして、物語のオチが明かされる。実は、行雄が体験したこの異常な世界は、孤独と絶望に苛まれる彼自身の脳内で作り上げられた幻影であった。家族も街の人々も、すべては彼の心が生み出したプログラムに過ぎなかった。最期に、行雄は自分という存在の虚しさと、その無限の静寂に飲み込まれる運命を受け入れるしかなかったのだ。

















































