あらすじ
大学生のこもりゆういちは、ある日のこと、学内で出会った火の用心のおもりに不注意で火をつけてしまい、突如として身に奇妙な力が宿った。彼は、どんな小さな煙であっても、まるで磁石のように自分へと引き寄せることができるようになった。最初は友人たちの前で笑い話にすぎなかったが、やがてその能力は、予想もしない運命の糸を紡ぎ出す。
運命の夜、情熱的な恋人であるはらだりえこが、古びたマンションで発生した火事に巻き込まれてしまったとの知らせが駆け巡る。炎と濃密な煙に覆われた現場に、ゆういちは咄嗟に駆けつける。しかし、燃え盛る炎の前で、自分の力はただ煙を呼び寄せるだけと打ちひしがれ、身動きが取れなかった。一瞬の絶望の中、彼の心に一筋の閃きが走る。
『煙は、火をも包み込み、時にはその猛りを収めるかもしれない…』
全てを賭けて集中したゆういちは、自らの奇妙な力を制御する決意を固めた。すると、彼が引き寄せた無数の煙が不思議な舞いを始め、次第に渦を巻くように炎の周囲を取り囲んだ。煙の流れが、まるで彼の意志に従うかのように火に近づき、酸素の供給を断ち始めると、救助隊はその隙をついて、炎に包まれたはらだりえこを無事に救出することに成功した。
だが、歓喜の刹那、運命の皮肉は突如として彼にのしかかった。全ての煙が一斉に暴走し、ゆういち自身をも包み込んでしまったのだ。現場に居合わせた人々は、彼が燃える炎と化すのではなく、やがて霧散し、姿を消してしまうのをただ見守るしかなかった。
以降、火災現場や事故現場付近で、かすかな煙の中に彼の幻影が目撃されると噂されるようになった。愛する人を救うため、不思議な力にすがり切ったゆういちの決断は、彼自身を永遠の煙と化す運命を招いたのだった。

















































