あらすじ
葬儀の薄暗い朝、田辺修一は小さな公園のベンチに腰を下ろしていた。喪服に身を包み、彼の手には婚約者・戸村涼子の映像が記録されたビデオカメラがあった。画面の中の涼子は、いつものように柔らかな笑みで語りかける。しかし、どこか違和感を覚えるのは、彼女の服装がわずかに変わっている点だった。
突然、背後から「そろそろ時間だよ」というかすれた声が響く。振り向くと、涼子の父親と思われる喪服姿の男が静かに立っていた。葬儀場にて、修一は棺の中の涼子をじっと見つめ、彼女の手を握りしめながら、耐え難い悲しみに暮れていた。
葬儀が終わり、混乱と虚無感に苛まれた修一は自宅へと戻る。部屋の片隅で、彼は再びビデオカメラに向かい、再生ボタンを押した。映像はあの葬儀の情景を映し出すが、見る度に涼子の服装や微妙な表情が瞬時に変わる。画角も台詞も同じはずなのに、ただ服の色合いだけが違っていた。修一はその変化に取り憑かれるように、何度も再生を繰り返す。
そしてある晩、映像の隅に自分のはっきりとした影を見つけた時、修一は凍りついた。最初は幻覚かと思ったが、再生するたびにその姿は確実に浮かび上がる。恐怖と絶望が交錯する中で、修一はある恐るべき事実にたどり着く。あの日、葬儀で彼が感じた哀しみは、実は自分自身の死の未練から生じた幻影であったのだ。
交通事故で命を落としていた修一は、死後も自らの記憶と未練が映像として再生され、永遠にリプレイされる存在となっていた。最後の映像で、涼子は穏やかな笑みを浮かべながら、ふと囁く。「これで、わたしはあなたを解き放つの」。その言葉とともに、修一は自分が現実の中で存在していなかったことを悟り、ただ静かに闇の中へと消えていった。

















































