燃えない親父
もえないおやじ

2025/3/26(水)

あらすじ

松田春香は忙しい女医として、仕事に没頭する日々を送っていた。父・徹の葬儀の日、彼女は携帯電話に夢中で、周囲の悲嘆に気づかぬまま火葬場へ赴いた。一方、弟の光一は、父への哀悼と春香の冷徹な態度に複雑な思いを抱いていた。火葬が始まると、炎は激しく燃え上がるが、唯一父の遺体だけは、不可解にも炎に触れることがなかった。火葬場の職員・鬼瓦が「お父さんには、何か心残りがあるのでは?」と呟いたその一言が、家族の秘密調査の扉を開くきっかけとなった。埃をかぶった日記、封印された手紙、そして色あせた写真の断片から、かつての惨劇――数十年前、母を失った火災の夜の記憶が浮かび上がる。幼い春香は、偶然にもその火事の一因に関わっており、その罪悪感を胸に秘めながら成長していた。父・徹は、口に出さずとも「許してほしい」という無言の訴えを家族に残していた。やがて、家族の問い詰める声と、重く沈む空気の中で、春香は自らの秘密と向き合わざるを得なくなる。激しい涙と共に、彼女は過去の罪と隠された記憶を告白する。その瞬間、春香の懺悔が火葬炉に届いたかのように、長らく遺体を覆っていた不可思議な呪縛が解かれ、突如として濃い炎が立ち上がり、父の遺体は完全に燃え尽きた。その光景は、家族に悲しみと同時に赦しの兆しをもたらし、父の魂が昇華する奇跡の瞬間となった。過去の重荷が燃え尽きたとき、春香と光一は、互いの心の傷と真実に向き合い、久しく失われた絆が再生するのを感じ、夜は新たな始まりを告げるのであった。


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