ネチラタ事件
ねちらたじけん

2025/3/26(水)

あらすじ

見城雅彦教授は、講義中に学生たちの乱雑な言葉遣いに衝撃を受け、日常の看板や放送で本来のはずの丁寧な言葉が失われていることに疑念を抱いていた。噂によれば、同僚の安藤博士が研究していた謎の菌『ネチラタ菌』が、人々の言語中枢に影響を与え、正しい言葉を奪っているという。

その日の夕方、教授は急ぎ研究室へ向かい、安藤博士の実験ノートを確認する。ノートには、菌の流出事故と、その予測不能な影響が記録されており、公共の言語が乱れる理由が明らかになった。しかし、教授は自らの過去の実験内容に眠る苦い秘密には気づいていなかった。

実は、数年前、教授自身が実験室でネチラタ菌に誤って曝露していたのだ。特殊なシャンプーで一時的に菌の作用を抑えていたため、長年正しい言葉を守ろうとする意志の裏に、自分自身も密かに感染していたのである。

そして、運命の分岐点は娘・聡子のお見合いの席に訪れる。会場では、聡子の見合い相手も、教授と同様に言葉がぼやけ、滑稽なリズムで語る状態に陥っていた。最初は戸惑いと不信が広がったが、次第に双方は笑いに変わり、会場は奇妙なコメディショーと化す。

結局、見城教授は自らの皮肉な過去と向き合わされ、正しさに固執するあまり、本来のコミュニケーションの温かみを失っていたことを悟る。狂いゆく言葉の中で、人間同士の思いやりと笑いこそが真の癒しであるという、皮肉にも温かい結末であった。


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