あらすじ
岩淵茂は新米警備員として、初めての夜勤に不安と期待を胸にデパート内を巡回していた。突然、子供服売り場の隅に、白いワンピースを纏った一人の少女が現れる。直感に駆られた岩淵は少女を追ったが、彼女は闇夜の中にひっそりと溶け込み、監視モニターにもその姿は一切映らなかった。後日、先輩の吉田博から、あの少女が数年前の火事で命を落としたはずの彼の娘、加代子に酷似しているという噂を聞かされ、岩淵の胸に不穏な疑念が生まれる。
決意を新たに、彼はデパートの奥まった倉庫を調べ始める。埃にまみれた古い箱の中から、少女の持ち物らしき小さな人形や、焼け焦げた一枚の写真、そして混乱の中で記録された日記の断片を発見する。日記には、火事の背後に隠された裏切りと、誰かに真実を伝えるべきメッセージが綴られていた。
その深夜、デパート全体が静寂に包まれた瞬間、再び彼の前に少女の幻影が現れる。寂しげな瞳と、どこか懐かしい微笑みを湛えたその姿を、岩淵は鏡越しに確認する。すると、あたりに漂う冷気の中で、彼自身の瞳がその少女と重なっていることに気づく。衝撃の瞬間、記憶のかけらがひとつ、ふたつと蘇る。かつて火事の混乱の中、彼は知らず知らずのうちに、その惨劇の真相に触れていた孤児であり、秘密裏にその家族に預けられていたのだ。
少女の幽玄な微笑みは、自らの存在と、隠された真実を告げるかのようだった。岩淵は、過去の因縁と贖罪の重さに耐えつつ、真実に向き合う覚悟を決める。彼が歩んだ夜の巡回路は、単なる警備の仕事ではなく、自分自身と運命を繋ぐ血の記憶を辿る旅へと変わっていた。やがて、深い闇の中で彼は消え去り、真夜中の神秘と悲哀に満ちた物語は、誰にも語られることなく、デパートの冷え切った空気に溶け込んでいった。

















































