君だけに愛を
きみだけにあいを

2025/3/26(水)

あらすじ

加奈子は、ひとりの寂しい夜、雑多な人々が集うバーで、一際異彩を放つ男と出会った。彼の左手だけが妙に優雅に動き、言葉少なに語るその雰囲気に、加奈子は不思議な安心感と好奇心を覚えた。男はにこやかな笑みを浮かべ、さりげなく彼女を自宅へ誘う。何かに導かれるように、加奈子はその誘いに乗ってしまう。

しかし、男の家に足を踏み入れると、静かな室内に漂う不穏な空気が一変して現れた。壁に刻まれた謎めいた符号、薄暗い照明、そして男の眼差しが、どこか狂気じみたものに変わっていく。突然、男は意味もなく身振りを大きくなげ、部屋の片隅にあった鏡を力任せに叩き壊してしまう。その割れたガラスが床に散らばる中、加奈子は直感的に危機を感じ、必死に抵抗の機を窺った。混乱の中、男自身が割れたガラスに触れ、血を流す姿に、一瞬の隙を見た加奈子は、痛みと恐怖を振り切り、逃げ出すことに成功した。

その夜の衝撃は深く彼女の心に刻まれ、時間が経つうちに加奈子は新たな人生を歩む決意を固め、優しく温かい男、行雄と結婚する。しかし、結婚してから5年が経過したある日、行雄に奇妙な変化が現れる。かつて右利きであった彼は、突然、すべての動作を左手で行うようになったのだ。最初は些細な違和感ととらえた加奈子も、次第にその変化の背後に潜む意味を感じ始める。

行雄の変貌は、あの夜の恐怖と密接に結びついているかのようであった。加奈子は両者の関係を探ろうと、あの奇妙な男と自分の過去を思い返す。調査の末、彼女は衝撃的な真実にたどり着く。あの男の狂気と異常な行動は、ただの偶然ではなく、古くから伝わる呪いの一部であり、その呪いは強烈な愛の試練として、加奈子だけでなく、彼女の血潮を受け継ぐ者にまで及んでいたのだ。

そして、行雄の突然の左利きへの変貌は、その呪いが彼自身にも宿っていた証拠であった。加奈子は、自身の過去と向き合い、恐怖と悲しみの中で真実の愛とは何かを問い直す。結局、呪いは愛の仮面の裏に潜む影であり、逃れることも変えることもできない運命の一部であった。二人は、その運命に抗うよりも、互いの欠片を受け入れ、暗闇の中でも共に歩む道を選ぶ。だが、加奈子の心には、あの夜の惨劇と左利きという象徴が、今後も消えることなく彼女を見守り続けるのだった。


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