かぎ

2025/3/26(水)

あらすじ

夜も更けたある晩、OLの白井夕子はいつもの帰り道を歩いていた。人気のない路地で、ふとした衝突により、手にしていた自宅の鍵が路面に散らばってしまう。急いで自宅へ戻ると、鍵の不在に気づいた夕子は、すぐさま近所の交番へ駆け込んだ。ところが、警官は淡々と「届いたものはありません」と告げるだけであった。

その瞬間、夕子の視線はふと、警官の机の引き出しに吸い寄せられた。そこで彼女は、普段自分が鍵に付けているはずのキーホルダーと瓜二つの装飾品を見つける。精緻な彫刻が施されたそのキーホルダーは、どこか記憶の奥底に眠る影を呼び覚ますかのようだった。ぶつかったはずの見知らぬ相手のぼんやりとした姿――もしかすると、それは自分自身の分身ではないか?

調査を進める中、夕子の中に押し込められていた断片的な記憶が、一気に蘇る。あの衝突は偶然ではなく、無意識の内に隠されていた“もう一人の自分”との再会の瞬間であったのだ。交番での警官の不自然な態度や、机に残されたキーホルダーがすべてを物語っていた。やがて、夕子は自宅の扉の前に立ち、震える手で鍵穴にかつがえを試みる。ドアの向こう、暗がりの中に映るのは――自分自身の、忘れかけたもう一つの顔であった。

こうして、落とした鍵と不思議なキーホルダーは、彼女の内面に潜む因縁と運命を暴く合図となり、平凡な日常を覆す驚愕の結末へと、夕子を静かに、しかし確実に導いていった。


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