お前が悪い!
おまえがわるい

2025/3/26(水)

あらすじ

柳沢良一は、いつものように穏やかな朝の光の中、出勤のため駅へと向かっていた。ところが、突如として目の前に現れたのは、二台のタクシーが激しく激突する信じがたい光景だった。事故現場で、タクシーの運転手たちは理由も告げず、一斉に彼に向かって『お前のせいだ!』と叫び放った。その瞬間、柳沢は混乱と恐怖に襲われ、ただ無言でその場を後にするしかなかった。

しかし、それは始まりに過ぎなかった。翌日から、職場の会議室、取引先との打ち合わせ、さらには何気ない街角までも、彼に向けられる非難の声が鳴り響いた。誰もが唐突に『お前が悪い!』と口走る中、柳沢は自分が何らかの呪縛に巻き込まれたかのような異様な感覚にとらわれる。自分の過去に何か隠された罪があるのではと、疑念が彼の心に根を下ろし始め、次第に現実と幻の境界を曖昧にしていった。

ついには、深夜のオフィスで一人、無機質な鏡の前に立った彼の前に、ひときわ不気味な光景が広がった。鏡に映る自身の姿が、まるで異なる存在のようにゆっくりと口を開き、『お前が悪い!』と告げたのだ。その声は、彼自身の心の奥底に潜む、抑え込まれていた罪悪感と自己否定の叫びであった。まさに、すべての非難は外部からではなく、自分自身の内面の闇が投影された結果であった。

その瞬間、柳沢は全ての真実に気づく。これまで背負わされ続けた『お前が悪い!』という呪縛は、彼自身が生み出した幻影に過ぎなかったのだ。然しながら、その認識と同時に、心の傷は深く、彼の精神はもはや正常な秩序を失っていた。最終的に、現実と虚構の境界を完全に失った柳沢は、終わりなき非難のエコーの中で、永遠に己の罪悪感とともに彷徨う運命を選ぶかのように、狂気の淵へと沈んでいった。

――結局、誰が本当に悪かったのか?答えは、すべて柳沢自身の内面に潜む、消すことの出来ない闇そのものであった。


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