いいかげん
いいかげん

2025/3/26(水)

あらすじ

藤原哲男は常に完璧を求める几帳面なサラリーマンだった。ある晩、上司の接待で訪れたバーで、彼はひとときの静けさを味わっていた。バーのトイレから外へ出ようとした瞬間、眩い光が彼を包み込み、次の瞬間には見慣れぬモダンな会社のオフィスに立っていた。混乱する中、一人の社員が静かに近づき、厚い書類の束を手渡す。藤原は書類を確認すると、その内容は数字の計算が曖昧で、署名や印も雑にまとまれており、今までの秩序とはかけ離れた「いいかげん」な仕上がりであった。

憤りと驚きを抱きながら問いただすと、社員はにっこりと微笑み、『たまにはいいかげんも必要ですよ。あまり完璧ばかりでは、世界の不思議を見逃してしまいます』と、意味深な言葉を残す。その瞬間、藤原の内面に突如として柔らかな違和感が芽生え、固く封じ込めていた完璧主義の殻がひび割れ始めた。やがて、オフィスの壁は溶け出すかのように変容し、彼は自分が夢の中にいるのではないかという疑念に襲われる。

気が付けば、すべては元のバーのトイレに戻っており、藤原の手にはあのいいかげんな書類が握られていた。翌朝、職場に現れると、机の上に正式な昇進通知が置かれており、そこには彼の創造性と柔軟性を高く評価する内容が記されていた。藤原は、自らが完璧主義に固執するあまり大切なものを見逃していたことに気付き、心の奥底で小さな解放感と笑いが湧いた。こうして、彼は日常の中に少しばかり『いいかげん』な余裕を受け入れる決意を新たにしたのだった。


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