あらすじ
春の日差しが柔らかく差し込むある朝、21歳の大学生・高田和夫は、かつて向かい合って座った女性の冷たい別れの言葉を思い出し、胸の奥にぽっかりと空いた穴を感じていた。東京から遠く離れたこの地方の大学で迎える4回目の春も、彼の心に暗い影を落としていた。
帰宅後、ふと耳にしたテレビの無機質な音に我に返った和夫。リビングの隅に、あぐらをかいてポテトチップスをむさぼる、一見すると無表情な頭巾姿の男が映っていた。その姿は、まるで彼の日常の一部となっているかのようで、彼は恐怖と混乱に駆られ、すぐさま警官を呼んだ。だが、到着した警官は和夫の「頭巾をかぶったオッサン」という一言にうなずくと、静かに手を合わせ「がんばって」とだけ告げ、現場を後にしてしまう。
その夜、和夫は眠りにつくことができず、翌日には町の古い文献や近所の噂話を頼りに、この不可解な存在について調べ始めた。住民たちが口にするのは、一人暮らしの家にひっそりと取り憑く座敷わらし『いまきよさん』の伝説であった。物語によれば、彼は孤独な人々に現れ、彼らの内なる悲しみと向き合わせ、再生の一歩を促すのだと言う。
雨上がりの薄明かりの中、再び和夫はリビングにその姿を見た。恐る恐る問いかけると、テレビ画面は突然古びた新聞記事を映し出し、そこにはかつてこの部屋で暮らした、一人の男が頭巾をかぶりながらチップスを手にしている写真が掲載されていた。震える手で記事を握りしめた和夫は、自分の中にある奇妙な共鳴を感じた。
そして、衝撃の真実にたどり着く。伝説の『いまきよさん』は、町でかつて孤独に苦しみながらも、己の生き様を全うできずに消えていった一人の男の霊であると同時に、和夫自身が別れと孤独の中で無意識に模倣していた姿そのものだったのだ。全ての動作、無表情な視線、ポテトチップスにすがる瞬間――それは彼自身の内面の投影であり、心が叫ぶ「がんばって」という無言の激励に他ならなかった。
最後の夜、和夫はふと鏡越しに自分の横顔を見ると、そこにかすかに頭巾のような影を見出した。現実と幻想の境界が溶け合うその瞬間、彼は自分自身と対話し、過去の痛みを受け入れる覚悟を決めた。翌朝、柔らかな光の中で笑顔を浮かべながら新たな一歩を踏み出す和夫の背後には、もはや『いまきよさん』の幻影はなく、彼の心に静かなる勇気だけが確かに宿っていた。

















































