あの日に帰りたい
あのひにかえりたい

2025/3/26(水)

あらすじ

江森和彦は、毎夜の孤独と後悔に耐えながら、かつて譲ったはずの大切なもの―愛する妻・玉枝―と夢の研究生活を取り戻せたらと願っていた。大学時代、情熱に燃える彼は、安心を求めるあまり、天才と讃えられる旧友・佐藤誠一に玉枝を譲り、自身の研究の道を断念してしまった。その選択が、彼の人生に深い傷を残すことになるとは、誰も知る由もなかった。

転機は突然訪れる。佐藤が完成させたと噂されるタイムマシンの存在を知った江森は、決心する。夜陰に紛れて研究所に忍び込み、恐る恐る機械のボタンを押すと、眩い光と共に彼は20年前の大学キャンパスへと飛ばされた。そこでは、まだ情熱に満ち溢れた若かりし自分と、すでに輝く才能を示していた佐藤がいた。

必死に未来を変えようと説得を試みるが、衝撃の事実が待っていた。玉枝は、実は未来から来た使命を帯びた存在であり、自らの手で運命を整えるため、あの選択を受け入れていたのだ。介入によって時空のバランスは崩れ、佐藤は記憶の断片を失い、大学時代の輝かしい未来すらも消えかかってしまう。

最終的に、江森は戻った現代で気づく。過去を変えようとするあまり、取り返しのつかない孤独と失われた愛情が彼自身を呑み込み、夢に代わるのはただ果てしない後悔だけだった。壊れたタイムマシンの残骸を前に、江森は「本当にあの日に帰りたかったのは、自分自身を消すことでしかなかったのだ」と、運命の皮肉を痛感しながら物語は幕を閉じる。


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