殺し屋ですのよ
ころしやですのよ

2025/3/26(水)

あらすじ

田中弘は、連日のように上司から激しい叱責を受け、心も体も疲弊していた。彼の唯一の慰めは、一日の終わりに腰を下ろすバーでの一杯の酒だった。そんなある晩、ふと背後から視線を感じ、振り返ると闇夜の中に一際輝く美女が立っていた。彼女は柔らかな笑みを浮かべながら近づき、『あなた、似てるわ』と意味深な声で囁いた。

続けて彼女はこう告げた。『私、殺し屋ですのよ。もしも、あなたに殺してほしい人がいたら、いつでもお引き受けいたしますことよ』。その一言に、酒に酔った弘の心は奇妙な興奮とともに、何か運命的なものを感じ始める。彼は、自分の内側にひそむ抑えきれない怒りと復讐心に、無意識のうちに気づいていたのかもしれなかった。

翌日、謎の封筒が弘の元に届く。封筒には、かつて彼を苦しめた上司の名前と、不可解な指示が記されていた。裏社会の噂を辿り、復讐の機会を求める彼は、次第に暗黒の世界へと足を踏み入れていく。交わされる取引や出会いの中で、あの美女の存在が幻のように、しかし確実に彼の心に影を落とす。

遂に、決行の日。薄暗い路地裏で上司と対峙した瞬間、上司は突然、涙ながらに口を開く。『お前は、かつてあの事件で……』と、過去の罪が暴かれる。実は、幼い頃の弘は、復讐に燃えるあまり人の命を奪った過去があったのだ。その秘密を知り続けた上司は、重い良心の呵責と救いたい思いの狭間で苦しんでいたのだった。

その時、再び現れた美女は、まるで幻のように静かに語りかけた。『あなた、似てるわ。あなたの内に秘められた殺し屋の血が、今、甦ろうとしているの』。彼女は一枚の埃をかぶった古い写真を手渡す。そこに写っていたのは、幼い日の弘と、そこに潜む冷たく無慈悲な表情。その瞬間、弘は己の内面に隠された暗黒の真実に気づかされる。

美女の正体は、ただの殺し屋ではなかった。彼女は、弘が長年封じ込めてきた罪と欲望、その内なる暗黒面が具現化した存在であった。復讐を夢見、己の弱さに縛られていた彼は、知らず知らずのうちに自らの過去の罪に再び引き込まれていたのだ。

物語の最後、昏い夜空の下、弘は古い写真を固く握りしめながら、涙と後悔に濡れた瞳で自らの運命を見つめる。誘いの言葉を放った美女は、やがて消え入りそうな影と化し、彼の心に己の罪を映す鏡として残った。気づかぬうちに、彼は自らの内面の殺し屋となり、運命に翻弄される一人の存在へと変貌していたのである。


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