ハネムーン
はねむーん

2025/3/26(水)

あらすじ

新婚の佳織は、輝く未来を夢見て夫所有の別荘へと足を踏み入れた。しかし、到着直後に夫は急用を理由に去り、佳織は静寂に包まれた館内でひとり残されることとなる。館を管理する使用人・槇島は口数少なく、どこか秘密を匂わせる眼差しで佳織を迎えるのみだった。

初めの数日、佳織は日中の穏やかな光景とは裏腹に、夜になると誰もいないはずの廊下から響く足音や、不意に耳元で囁くような声に悩まされる。恐怖と不安が募る中、好奇心に駆られた彼女は、館の奥深い書斎で埃をかぶった日記と古い写真の束を発見する。その記録は、かつてこの館で巻き起こった悲劇の痕跡を鮮明に物語っており、そこには夫と関わる不可解な事件の数々が記されていた。

衝撃の事実は、夫が数年前の事故でこの館で命を落としていたということだった。急な「用事」と称された失踪は、そんな過去を秘匿するための偽装であったのだ。そして、静かに仕える槇島こそが、亡き夫の霊として館を守る存在に他ならなかった。さらに、夜毎に佳織の前に現れるもうひとつの影。その姿は、夫の幻影と重なりながらも、どこか自分自身を映すような、不思議で背筋を凍らせるものであった。

そして、決定的な夜。凍りつくような闇の中、佳織はふと鏡に映る自分の横顔に目を奪われる。そこに浮かんでいたのは、かつて愛したはずの夫の面影ではなく、彼女自身の影が、まるでもうひとりの自分が存在しているかのように微笑んでいた。悟った瞬間、佳織は己の運命を受け入れるほかなかった。すでに彼女は、夫の亡霊と融合し、この館の新たな守護者として生きる宿命に囚われていたのだ。


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