あらすじ
田中太郎は、毎朝ぼさぼさの髪とよれよれのスーツに身を包み、ひっそりと銀行へ向かっていた。新聞は机の上に置かれたまま、一度も読むことがなく、犬が近づけば道端に下がるほどの臆病者であった。ある日、他行の担当者に融資の話を目の前で奪われ、課長の厳しい怒声を浴びた後、彼のもとに差出人不明の小包が届く。封を切ると、中から現れたのは古びた銃だった。手に取った瞬間、冷たさと重みを感じると同時に、これまで感じたことのない力と自信が胸中に満ち溢れた。翌日から、田中はいつもなら避けていた困難な状況に果敢に挑むようになる。電車内で大声を出す男に毅然と注意を促し、道端で迷子の子犬すら優しく声をかける。その変貌ぶりは瞬く間に町中に広まり、いわば“銃男”として話題となった。しかし、ある夜、闇市で暴徒と対峙した田中は、決意を胸に銃を構え引き金を引く。ところが、針金のような静寂が流れる。驚いて銃を点検すると、そこには発射機構も弾丸もなく、ただの飾り物に過ぎなかった。その瞬間、田中は悟った。外から与えられたと錯覚していた“力”は、実は彼自身の内面に眠る勇気の象徴に過ぎなかったのだ。笑みを浮かべながら銃をそっと置くと、かつての臆病な自分を超え、本当に必要な強さを自らの心から引き出せたことを確信し、彼は新たな一歩を踏み出した。

















































