あらすじ
新谷杏奈は、平凡な大学生活を送っていた。しかし、ある日の講義中、ふと隣席の一人の学生が、無表情でじっと自分を見つめているのに気づく。驚きと不安が心を駆け巡る中、振り返ると教室内の全員の視線が一斉に自分へ向けられている。恐怖に駆られた杏奈は、声も出せず教室を飛び出し、廊下を走るが、どこへ行っても無数の視線が自分を追いかけるように感じられた。
翌日、キャンパス内で誰とも目を合わさぬように歩く杏奈の視界に、唯一異彩を放つ同じ4年生の城琢磨が映る。彼は、どんな時も冷静で、まるで他人の視線に影響されないかのように、こちらを見返すことなく歩んでいた。意を決した杏奈は、彼に近づき問いかけると、琢磨は静かに重い口を開いた。「君は、ある呪いの犠牲になっている」
琢磨は、代々伝わる一族の呪縛について語り始めた。その呪いは、かつて忌まわしい儀式によって、特定の者に宿る不浄な力が、周囲すべての人々の視線として現れるというもの。つまり、これまで杏奈に向けられていた視線は、決して誰かが好奇心から注いだものではなく、呪いが放つ宿命の証だったのだ。
二人は、解呪の手がかりを求め、大学の奥深い記録室で古文書を探し、忘れ去られた祠に封じられた「鏡の儀式」の存在にたどり着く。夜のキャンパス裏、朽ち果てた祠の中で古びた鏡の前に立った二人。琢磨は、鏡に触れることで呪いの力が一度に移ろうと警告するが、運命を変えようとする杏奈はためらいながらもその手を伸ばす。触れた瞬間、鏡面に映る自分の瞳の中に、無数の異様な視線が浮かび上がり、胸の奥から冷たい重みが押し寄せた。
その瞬間、杏奈は衝撃の真実に気づく。これまで自分を追い詰めていた視線は、すべて自らの内に潜む呪いの現れであり、逃れることは不可能だったのだ。見守る琢磨の瞳には、かつて自らも呪いに屈した悲哀が映り、彼はただ無念の表情で呟く。「君はもう逃れられない。視線とは、己の運命を映し出す鏡に過ぎない」
杏奈の叫びは虚しく夜の闇に溶け、彼女の瞳は次第に無数の視線と一体化していった。その日以来、杏奈は呪いの宿命に縛られ、誰にも救われることのない、彷徨う影として消え去ってしまった。

















































