あらすじ
波之浜茂は、毎朝同じ時間に目覚め、いつものように電車に揺られて会社へ向かっていた。日々の仕事に追われ、心には小さな期待や夢すら持たず、淡々と過ぎる日常に埋もれていた。ところが、ある朝、駅前のホームに見知らぬ笑顔を浮かべた女子高生たちが一斉に駆け寄り、彼に向かって「すみません、握手して下さい!」と元気に叫んだ。戸惑いながらも彼はその要求に応じ、ひとりひとりと力強い握手を交わすと、その瞬間、彼の手から伝わる温かさが周囲に奇妙な共鳴を生み出した。
その日以降、波之浜のもとには握手を求める女子高生たちが押しかけるようになり、通勤途中や街角、学校帰りの道すがら、彼は握手リレーのような出来事に巻き込まれるようになった。メディアは次々と彼の話題を取り上げ、握手イベントが開催されるほどに人気は急上昇。握手のたびに、彼自身の心も次第に温かさを取り戻し、孤独が消えていくかのように感じられた。
そして運命のライブイベント当日、会場は握手を求めるファンたちで満ち、歓声と興奮が会場を包み込んだ。ステージ上で笑顔を振りまく波之浜は、ファンに感謝の言葉を届ける。しかし、ふとした瞬間、学生時代に大切な親友と交わした『いつか握手で絆を確かめ合う』という約束の記憶が蘇る。突然、すべての握手が単なる偶然ではなく、かつて失った友情と絆を取り戻すための不思議な儀式であったことに気づかされるのだった。
ライブの終了とともに、彼は涙ながらにその真実を噛みしめる。握手の温もりは、忘れかけた大切な絆を再び結び直す鍵であり、彼自身が求め続けた心の救いであった。まさに、握手という行為に込められた奇妙な運命の導きが、彼の人生に新たな意味を与えた瞬間であった。

















































