通算
つうさん

2025/3/26(水)

あらすじ

山岡武は、定年を二日後に控えたベテラン刑事だった。今日の張り込みは、いつものように静かな時間を過ごすだけの任務と思われた。しかし、事件現場から警察署へ戻ると、彼を待っていたのは思いも寄らぬ歓迎パーティーだった。

署内は拍手と笑顔に包まれ、同僚たちは『通算出勤日数』『通算胃薬を飲んだ回数』など、彼が生涯積み重ねたあらゆる数字を記した記念ボードを披露していた。山岡は戸惑いながらも、自らの過去――失敗も成功も、苦労と笑いが刻まれた日々を静かに振り返った。

その祝賀の最中、署長が壇上に上がり、厳かな声で語り始めた。「山岡、あなたの記録は、単なる数字ではなく、我々の信頼と絆の証です。そして実は、あなたの通算記録は、これからの新システムの鍵となるのです。」巨大スクリーンには、今まで隠されていた『通算エラー数』という意外な数値が現れ、会場は一瞬の静寂に包まれた。

署長の言葉は衝撃的だった。これまでの苦労と、些細なミスさえも、全てが次なる未来への布石とされたのだ。山岡は悟った。定年退職と思われていたその日が、実は永遠に刻まれる新たな任務の始まりであったことを。

そして、オチとして彼は苦笑いしながら呟いた。「俺の退職は、ただの幕引きじゃなく、新たな通算のスタートなのか…」拍手と祝福が鳴り響く中、山岡武は自分の運命――数値として記録され、そして未来へと繋がる奇妙なシステムの一部となる運命を、静かに受け入れていった。


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