あらすじ
大友和彦は、目覚めることなく過ぎ去った時の中で、突然眩い光に包まれて目を覚ました。いつの間にか、彼は最新医療機器が並ぶ白い病室のベッドに横たわっていた。彼は25歳の若者として末期がんと闘っていたあの日、未来に完全治療法が見つかるという一縷の望みに賭け、人工冬眠を選んだのだ。
病室内では、モニターに『治療成功』と表示され、医師たちはにこやかに説明する。しかし、その清潔な環境の中で、大友の心をざわつかせる異変があった。病院の廊下で、ふと彼は自分と瓜二つの男の姿を見かける。疲れ切った表情、その歩み、そしてどこか哀しみを帯びた瞳……。一瞬、自分の幻影かと思った大友だが、その男は決して消えず、何度も彼の前に現れた。
困惑と不安に駆られ、大友は病院内の隅々を探索し始める。古びた診療記録の山の中で、彼は人工冬眠実験に関する秘められたファイルを発見する。そこには、驚くべき事実が記されていた。大友自身の遺伝子を二重に複製し、二つの存在として同時に治療プロセスを進行させる実験が行われていたのだ。目の前に現れる男こそが、彼の「もう一人の自分」――クローンであった。
深夜、静まり返った病棟の中で、再び二人は対峙する。男は静かに口を開き、低い声で告げた。「俺たちは、一つの魂を二つに分かたれさせた実験体だ。どちらが本物か、もはや重要ではない。治療とは、己を完全に解体し新たな存在へと再構築する行為なのだ。」大友はその言葉に凍りつき、自分が夢見た『完全治療法』の真意に気づく。治療がもたらすのは、肉体の回復だけではなく、アイデンティティまでもが消失する危険な実験であった。
そして最後の瞬間、病院全体に異常警報が鳴り響き、システムが暴走を始める。二人の意識は互いに干渉し、境界が曖昧になっていく。光と音が交錯する中、大友は笑いながらも涙をこぼした。「完全治療法とは、結局自分自身を完全に捨て去ることなのかもしれない…」そして、二人の存在は一つに融合し、病院のモニターには『実験完了―新たな存在誕生』とだけ表示された。

















































