あらすじ
大学のキャンパスが静まり返る深夜、雅樹は裏通りの薄暗い酒場で、胸中にくすぶる嫉妬の炎に煽られていた。恋人の里佳に向けるあたたかな眼差しが、目黒の何気ない笑顔と挨拶に曇り、彼の心は怒りと不安で満たされていく。そこで雅樹は、ひそかに一計を案じた。自らの手で、目黒の運命を決する復讐計画として、一本のたばこに小型爆弾を仕込み『運命の一服』と銘打ち、密かに目黒へと手渡す作戦を練ったのだ。
翌朝、霞む光の中で偶然を装いながら目黒にたばこを差し出すと、目黒は一瞬戸惑いつつもそのたばこを受け取った。しかし、すぐにふとした衝撃の中でたばこは目黒のポケットから零れ落ち、通りすがりの一人の足元へ転がってしまう。そこからたばこは、風に乗り人々の手から手へと思いもよらぬ運命を辿る。自転車の運転手、商店の店主、好奇心旺盛な子供たち――誰もがそのたばこに触れ、『呪われたたばこ』として噂が瞬く間に町中に広まっていった。
計画の破綻に気づいた雅樹は、必死にたばこを取り戻そうと動くが、その行方はつかめず、彼は次第に自らの感情と向き合わざるを得なくなる。ついには、町外れの古びた書店で一人の風変わりな老人の手にたどり着く。老人は静かにたばこを机に置くと、低い声で『運命は自らの手で掴むものだ』と呟いた。驚いた雅樹に、老人はさらに語りかける。実は、盗聴ラジオで流れる噂を聞いた一者が、雅樹の計略を模倣すべく偽の爆弾たばこを大量生産し、あたかも本物の脅威であるかのように町中へ流布させていたというのだ。
その瞬間、すべての因果が狂おしく交錯する。雅樹が抱いた復讐の炎は、実際には自らの内面に潜む狂気と嫉妬の象徴に過ぎず、手作りの計略は偽りの火種と化していた。誰も傷つけることなく、ただ町に混乱と奇妙な笑い話をもたらすだけであった。こうして、復讐に燃えた男は、自身が企てた悲劇の虚しさと、その先に待つ運命の皮肉なオチを目の当たりにすることとなった。

















































