はこ

2025/3/26(水)

あらすじ

彼女はある晩、いつもの眠りから突然の目覚めを迎えた。目を開けると、そこには全く見知らぬ闇の中、狭苦しい箱のような空間だけが存在していた。まるで棺に閉じ込められたかのような重苦しさと、息を潜めるほどの静寂。その唯一の光は、彼女のスマートフォンが放つ微かな明かりだった。

恐る恐る手に取ったスマホで、まずは110番に助けを求める電話をかける。しかし、受話器の向こうからはただの無音。次に、彼に繋がるはずの電話も試みるが、応答はなく、空虚な沈黙だけが彼女を包んだ。胸の奥に広がる不安と孤独は、まるで時間すらも歪めてしまうかのようだった。

その絶望的な静けさの中、スマホの画面に突如として不可解な通知が現れた。一行のメッセージ――『あなたはもう、ここには存在しない』。その衝撃は、彼女の心臓を凍りつかせ、全身に冷たい恐怖を走らせた。

そして、あの瞬間に彼女は理解した。これまで必死に救いを求めた全ての電話、かすかな希望は、実は現実の叫びではなく、彼女自身が迎えるべき最期の幻想に過ぎなかったのだ。狭い箱は、かつて生きていた証を閉じ込める墓となり、スマホからのあの最後の通知は、死後の世界からのささやかな別れの言葉であった。

彼女は静かに、そして永遠の闇の中へと吸い込まれていった。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.