爆弾男のスイッチ
ばくだんおとこのすいっち

2025/3/26(水)

あらすじ

大学の正門前、夕暮れ時。江草俊哉はティッシュ配りのアルバイトに励みながら、通り過ぎる美人女学生・千明に心を奪われていた。ふとした拍子に、大柄な男と激突し、彼の手にしていたティッシュ入りの段ボールが路上に散乱する。驚きと戸惑いの中、俊哉は散らばったティッシュをかき集めていると、背後から誰かの手が差し出された。

振り返ると、同じ授業を受ける織田省吾が、薄笑いと共に一つのスイッチを差し出していた。省吾は低い声で「これが、俺の身体に仕込まれた爆弾の起爆スイッチだ」と告げる。意味が掴めず戸惑う二人は、人気のない裏路地へと移動し、事の真相を探ろうとする。恐怖と不安が交錯する中、二人は連絡を取り合い、専門家の助けを求めるが、事態は日増しに緊迫していく。

スイッチは次第に不気味なリズムを刻み、二人の心拍すら合わせるかのようだった。混乱のピークに、薄暗い倉庫の扉が音を立てて開く。そこに現れたのは、年季の入った制服を着た清掃員であった。彼はにこやかに告げる。「落ち着きな。あのスイッチは、本物の爆弾の起爆スイッチじゃない。今日の午後、演劇部が用意した小道具なんだよ。大柄な男も、実は役者の一人だったんだ。」

その瞬間、重苦しく張り詰めた空気は一転して滑稽なものに変わる。緊迫の中にあった全ての騒動は、ただの舞台セットの一部に過ぎなかったのだ。現れた千明が「もう、何が何だかしら」と笑いながら声をかけ、俊哉と省吾は、命を左右するかと思われた一日がただの演劇の仕掛けであったことに、苦笑いを禁じ得なかった。こうして、奇妙な誤解と偶然が紡いだ一幕は、大学キャンパスの伝説として静かに語り継がれることとなった。


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