あらすじ
向井達郎は、長年の現場経験を誇る設計技師であった。新築の高層ビルの工事が進む中、工程の遅れと重圧に苦しみ、夜を徹して設計図と格闘していた。その結果、新婚旅行を断念するという自己犠牲が、婚約者の葉子との間に大きな亀裂を生んでしまう。葉子は強い怒りと不安の中、結婚そのものを疑い始めていた。
ある日、現場でひとときの休息をとっていた達郎は、突然の眩暈に襲われた。体が軽くなる感覚に抵抗できず、彼はあっという間に32階から転落してしまう。落下の恐怖と、取り返しのつかない失態への後悔が胸を締め付ける中、ふと口から葉子の名が零れた。その叫びは、まるで封じ込められた奇跡の鍵のように、全体に響き渡った。
驚くべきことに、達郎の体は落下の勢いを失い、ゆっくりと元の形に回復し始めた。現場の作業員たちは固唾をのんでその光景を見守り、時間すら逆行しているかのような錯覚に陥った。落下事故は、あたかも魔法の如く自然の法則を無視する瞬間に変わり、彼は奇跡的に安全な着地を果たす。
後日、地元の噂では、現場近くに住む謎めいた老人が所有する古い護符の存在が語られるようになった。その護符は、失われた愛と再生の力を秘めており、達郎が無意識のうちに抱いていた「もう一度やり直す」という切なる願いと、婚約者葉子への深い想いを呼応させたのだという。まさに、彼の叫びが護符の魔力を解放し、運命の歯車を劇的に逆転させたのだ。
そしてオチは、実は達郎自身がその護符の力を内に秘めていたことである。新婚旅行をキャンセルし、限界まで追い込まれた心の奥底には、再生への強い意志が宿っていたのだ。葉子の名を叫んだその一瞬が、奇跡を引き起こす決定的な『まばたき』となり、彼の人生は不運な事故から希望へと劇的に転じた。

















































