黒魔術
こくまじゅつ

2025/3/26(水)

あらすじ

長谷川洋は、どこか抜けているが真っ直ぐな心の持ち主で、愛する妻・奈々と平穏な日々を送っていた。ある週末、二人は課長宅に招かれ、華やかなはずの夕刻は、課長夫人による容赦ないいじめにより、奈々の心と体に暗い影を落とす。奈々の哀しげな涙に胸を打たれた洋は、帰り道の駅前でふと目にした古びた一冊の書物に、不思議な運命を感じ取る。それは、黒魔術の秘伝書であった。

絶望と愛情が交錯する中、洋は奈々を救うために、書に記された呪文に取り組む決意を固める。最初の儀式は、一見、成功したかのように見えた。課長夫人には次々と不可解な不運が降りかかり、洋は一縷の希望を得た。しかし、黒魔術は決して軽い代償を伴わない。日が経つにつれ、奈々は幻覚や不穏な予感に苛まれ、洋自身もその呪力に取り憑かれるようになっていく。二人の生活は、次第に光と影が交錯する奇妙な日常へと変貌していった。

そして、運命の夜。奈々を守るため、洋はついに禁断の最終章に挑む。震える手で呪文の言葉を唱えると、突然、部屋は真紅の光に包まれ、時間さえも凍りついたかのような静寂が広がった。翌朝、奈々が目を覚ますと、どこにも夫の姿はなかった。ただ、壁に淡い字で残された呪文の一節が、過ぎ去りし愛の証のように囁いていた。

実は、洋は己の愛情のあまり、黒魔術の呪縛に魂を捧げ、自らを闇へと溶かしてしまったのだ。皮肉にも、奈々は次第に夫の温もりを失う代わりに、胸に冷たい闇を宿し始める。彼女の瞳に浮かぶ影は、かつて愛した洋の面影すら映さなくなり、町には“愛ゆえの呪い”という恐るべき伝説がひっそりと語られるようになる。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.