あらすじ
囚人七十番の本村は、薄暗い独房でひっそりと日々を過ごしていた。唯一の楽しみは、気に入らぬ囚人・近藤に向かって、自ら考案した死刑場の怪談を延々と語ることだった。彼は、あの錆びた扉の向こうに恐怖と絶望が広がる世界があると、大げさに語り、近藤の背筋に冷気を走らせていた。
そして運命の皮肉は突然訪れる。ある日、本村自身も移送の命を告げられる。移送の日、彼はかつて語った怪談の舞台となる死刑場付近を通るルートを辿ることになった。重い足取りで進む彼の前に、かつて自分が作り話の中で描いたその扉が、薄暗い路地に佇んでいた。まるで闇から呼び出されたかのように、扉はひっそりと存在感を放ち、低いうなり声とともに冷たい風が吹き抜けていた。
恐怖と疑念に苛まれながらも、本村は立ち止まる。そこからは、足音が遠くから近づく音が聞こえ、闇の中から何かが這い出してくる気配すら感じた。振り返ると、かすかな笑みを浮かべる近藤の姿があった。近藤は静かに口を開く。「本当に恐ろしいのは、この扉の向こうではなく、あなた自身が創り上げた恐怖だ」。
その瞬間、本村は凍りついた。実は、近藤こそがこの扉の存在を呼び起こすために仕組んだ張本人であり、かつてあの死刑場で執行された囚人の怨霊であった。彼は、本村がただの戯言だと思って語っていた怪談に秘められた真実を知っていたのだ。それは、死刑場の扉が囚人たちの内に潜む恐怖を具現化し、その運命を狂わせる呪いの入り口であるということ。
近藤の言葉に、全てが一瞬にして明らかになる。本村が作り話だと思い込んできた虚構は、今や彼自身を捕らえ、逃れられない現実となっていた。抵抗する間もなく、本村は震える手で扉に触れると、軋む音とともに虚構と現実の境界が崩れ去った。暗闇へと吸い込まれるその瞬間、彼は己の語った恐怖の罠に囚われ、運命の皮肉な結末とともに、永遠の闇へと消えていった。

















































