愛車物語
あいしゃものがたり

2025/3/26(水)

あらすじ

山本伸吾は、香織との悲劇的なドライブ事故以来、彼女の思い出が宿る愛車を手放すことができず、日々その整備に励んでいた。エンジンの低いうなりの中、時折、香織の柔らかな声が聞こえるような気がし、心は過去に引き戻される。半年後、新たな恋人・真菜が現れ、伸吾は彼女と共に再びあの車でドライブに出かけることにした。しかし、走り始めると車は突如として異常な振る舞いを見せ、ハンドルが勝手に揺れ、夜闇に不規則な灯りが差し込む。後部ミラーに浮かぶ一瞬の女性の姿――それはまぎれもなく、かつての香織の微笑みであった。伸吾が恐る恐る問いかけると、真菜はしばらくの沈黙の後、静かに呟いた。「わたしは、あなたの心が生み出した幻影。新しい恋なんて存在しないのよ。」その瞬間、真菜は消え去り、車内には香織の温かな声だけが残った。伸吾は自らの未練と罪悪感が、現実と幻想の境界を曖昧にしていたことに気づく。最後に、愛車はひとりでにエンジンを轟かせ、闇夜へと走り去り、彼の過去と向き合う運命の象徴として、永遠の孤独を刻みつけた。


: 50


寓話

物語

関連

© 2025 新解釈物語 | All Rights Reserved.