あらすじ
初野はごく普通の銀行員として、毎朝決まった時間に出勤していた。ある朝、控えめな自室で鏡に映る自分の額に、いつもとは違う奇妙なバツ印が浮かんでいるのに気付く。驚いた彼は家族や同僚に問いかけるが、誰もその印の存在を認めようとはしなかった。不安が募る中、通勤電車に揺られていると、ふと隣に立つ男の姿が目に入る。その男もまた、額に同じバツ印を宿していたが、周囲の人々はまるで彼の存在に気付かないかのようだった。好奇心に駆られた初野は、男の後を静かに追い、薄暗い駅の裏通りへと足を踏み入れる。そこで男は、誰にも聞かれることなく、静かに語りかけた。「あなたはもう、この世にはいない」――その瞬間、初野は周囲の風景が一変し、自分の体が透明になり、通り過ぎる人々の視界から完全に消えていることに気付く。すべては、彼がすでに死しており、未練と罪を背負った幽霊としてこの現実に囚われているという衝撃の事実であった。初野は、自らの存在の虚無と向き合い、やむなくこの運命を受け入れ、最後の旅立ちへと足を踏み出した。

















































