あらすじ
朝の薄明かりの中、敏夫はまた一日を始めた。毎朝、登校拒否の息子を無理やり学校へ送り出すその日課は、彼にとって痛々しい儀式のようなものだった。父としての無力感と自己嫌悪を胸に、敏夫は足早に職場へ向かう。しかし、どこへ行っても、いつもの道端や駅前、薄暗い路地裏に、誰にも気づかれることのない3人の不良中学生が立っていた。彼らは、汚れた制服と不敵な笑みを浮かべ、じっと敏夫を見据えているだけだった。
最初は、通りすがりの偶然だろうと自分に言い聞かせた敏夫だった。しかし、日が経つにつれて彼らの出現は常習的になり、通勤や買い物、ひとときの休息の場でも、必ずどこかでその影を見るようになった。敏夫は周囲の人々に問いただしても、誰一人としてその姿を認める者はいなかった。不気味な孤独と不安が心を侵食していく中、敏夫は決意する――この謎の存在の真相を突き止めると。
ある夕暮れ、敏夫は意を決して町外れの廃校跡へと足を運んだ。かつて賑わいを見せた校庭は、今や枯葉と静寂に彩られ、時の流れを物語っていた。すると、黄色い街灯の下に突如として3人の不良が姿を現す。息をのむ敏夫に、不良の一人が低く囁くように告げた。「お前はずっと、忘れたくなかった真実から逃げてきた」。耳を疑うその声に、敏夫の胸中で何かが弾けた。かすかに甦る記憶の断片――若かりし頃、己の弱さに泣き、ある大切なものを手放してしまったあの日。彼は、その痛みと後悔をずっと封印し、逃れようとしてきたのだ。
そして、衝撃の事実に気づく。今日まで己の前に現れていた3人の不良中学生とは、決して他人ではなかった。彼らは、敏夫自身の心の闇と、長年押し込めてきた自己否定の具現であったのだ。姿形は荒んだ青春そのもの。彼らの無言の視線は、「お前こそが、逃げ続けた自分自身そのものだ」という厳しいメッセージを伝えていた。
涙と共に気づいた敏夫は、己が長い年月抱えてきた罪と後悔、そして自分自身への誤った逃避を受け入れ始めた。その瞬間、隣で静かに佇んでいた息子の瞳に、温かな理解と助けを示す光が宿るのを感じた。息子もまた、父の重い影に苦しみながら、どうにか生き抜こうとしていた。
翌朝、敏夫は心新たに通学路を歩んだ。昨日まで毎日のように姿を消さなかった3人の幻影は、まるで秋風に舞う枯葉のごとく、静かに消え去っていた。父は、己の内面に潜む痛みと向き合い、息子との絆を新たに紡ぐ決意をしたのだ。待ち続けた“待ちぶせ”は、実は過去の自分への厳しい警告であり、同時に解放への鍵であった。こうして敏夫は、闇を受け入れた先に見えたほんのわずかな光を頼りに、明日へと歩み出した。

















































