目覚まし時計
めざましどけい

2025/3/26(水)

あらすじ

北出友里子は、恋人である御曹司工藤順一との明るい未来を夢見ながら、日々を淡い期待とともに過ごしていた。結婚の話がちらほらと持ち上がる中、ある晩、会社からの帰り道でふと目に留まった小さなアンティークショップ。その店先に鎮座する古びた目覚まし時計に、彼女の心は一瞬で奪われた。店主の低い声が囁く「この時計は持ち主の不幸を取り除く力がある」という言葉に、説明のつかない魅力と運命を感じ、彼女は思わず購入してしまう。

自宅に持ち帰った時計は、夜ごとにかすかな音を鳴らし、些細な不運すらも回避するかのような不思議な働きを見せ始めた。友里子は、転ばぬ先の杖として時計の恩恵を実感し、順一との生活が次第に順調に回り始めるのを喜んだ。しかし、次第に周囲では不可解な出来事が連鎖し始める。親しい友人との間に突如として亀裂が入り、順一の家族にも災いが立て続けに降りかかるようになった。

ある深夜、ふと目にした時計の裏面に貼られた一枚の紙切れ。その短い文字―『幸福は必ず犠牲を伴う』―は、彼女の心に冷たい衝撃を与えた。恐る恐る店主へ問いただすと、彼は静かに口を開いた。「この時計は、あなたの不幸を外部へ転嫁する代わりに、最も大切な者から幸福を奪う仕組みになっています。あなたが救われるたびに、愛する人々の運命が蝕まれるのです。」

その告白と同時に、順一の体調が急激に悪化し、彼の家族にも次々と不幸な事件が起こる。友里子は、時計がもたらす奇跡の裏側に隠された恐ろしい真実に気づき、深い後悔と絶望に打ちひしがれる。何度も時計を破壊しようと試みたが、翌朝にはあっけなく元通りになっており、呪いのような宿命は逃れられなかった。

そして、ある夜、順一が忽然と姿を消した。その瞬間、友里子は全ての出来事が自分の選択によって運命を狂わせたのだと悟る。鐘の微かな音が闇夜に響く中、彼女は辛うじて笑みを浮かべた——それは、祝福と思われた奇跡が、実は愛する者すら犠牲にする運命の皮肉な罠であったという、最後の真実を呟くかのような、奇妙な結末であった。


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