2040年のメリークリスマス
にせんよんじゅうねんのめりーくりすます

2025/3/26(水)

あらすじ

多喜田利彦は、夜の警備業務を終えたある寒い冬の夜、ふと鳴った携帯電話に戸惑いながらも出た。画面に映し出されたのは『未来の孫』との文字。声はかすかに震え、幼い少女の口調で語りかけた。

「じぶんの未来を変えるために、大切にしていた原稿をもう一度見直しなさい」

最初は冗談かと思いながらも、次第に少女が次々と詳細な未来の出来事を予言するのを聞き、彼は半信半疑ながらも、かつて自分がボツにした原稿に目を通し手を入れてみることにした。驚くことに、その改稿した原稿は出版社に採用され、彼の漫画家としての第一歩となった。

生活は一変し、希望に満ちあふれる日々が続いた。しかし、成功の影で奇妙な電話は再び鳴り、深夜の自室で、少女はしみじみと言い放った。『あなたが変えた未来は、実はあなた自身を救うための警告だったの。』

その瞬間、利彦はふと、自分の耳にした言い回しや語り口が、過去の自分の独り言と酷似していることに気付く。混乱と恐怖の中で、彼は遂に理解した。電話の向こうの「未来の孫」とは、本来存在するはずの孫ではなく、時のループの中で迷い込んだ、自分自身の過去からのメッセージであったのだ。

翌朝、新聞の見出しは、彼が原稿に込めた未来の悲劇を見事に予告していた。自らの才能で運命を変えようとしていた彼は、むしろ自らの成功が悲劇の種となり、時間の狡猾な罠に嵌められていたことを悟る。彼は苦笑いを浮かべながら呟いた。

「これが、未来からのメリークリスマスか……」

すべては、自分自身に仕掛けられた運命という皮肉なサプライズであった。多喜田利彦は、自らの手で描き出された未来と、時のループに捕らわれた自分の存在に、ただ虚しさを感じるのであった。


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