あらすじ
落ち武者の心の内
昔々、ある小さな村に、一人の落ち武者がひっそりと隠れていた。彼の名は武士清四郎。戦に敗れ、命からがら逃げ延びた彼は、どこにいても敵の目が光っているように感じていた。薄の穂が風に揺れるたび、「あれは敵の刀の刃だ!」とビクビクしていた清四郎は、安心できる場所を求めて彷徨っていた。
ある日、村人たちが集まる広場で、清四郎は思わぬ光景を目にした。子どもたちが楽しそうに駆け回り、笑い声が響いていた。「あの笑い声は、もしかして敵の陰謀かも?」と欲望に駆られながらも、恐怖におののく清四郎。結局、彼は村人たちに助けを求められず、薄の穂に隠れて、ひたすら周囲を警戒し続けた。
数日後、村人の一人が清四郎を見つけ「何をしているのか?」と声をかけた。清四郎は小さく「敵が近い」と答えると、村人は笑って「それはただの風だよ」と言った。しかし、清四郎の心にはすでに悪い影が立ち込めていた。「風が敵の隠れ家かもしれない。風が吹くたびに、彼らが近づいてくるのだ」と彼は思い込んでいたのである。
ついには、村を襲ったのは敵ではなく、清四郎自身の妄想だった。村人たちは彼の存在にすっかり気づき、笑い話にしてしまった。「武士清四郎は、すすきの穂を恐れた男」として語り継がれることになる。結局、彼が怖れていたのは、実は自分自身の心の中に潜む恐怖だったのだ。こうして村は彼の笑い話で盛り上がり、清四郎はそのまま村の奇妙な伝説に取り込まれていくのだった。















