あらすじ
ある温泉宿の秘密
静かな山あいにある小さな温泉宿。そこでは、毎日、様々な客が訪れ、特に年配の客が多かった。この宿には、一つの噂が立っていた。「新湯には毒がある」と。その毒とは、どうやら新しく沸かしたお湯に、特別な成分が含まれているということだった。
ある日、宿に宿泊していたおじいさんが新湯を楽しむことにした。彼は元気で、いつもと変わらず温泉を堪能していた。しかし、そんな彼を見ていた宿の主人は、密かに笑っていた。「今年の新湯、今まで以上に調子がいいんだ」と、心の中でほくそ笑んでいた。その理由は、実は新湯に「年寄りが一番風呂を楽しむことは、結果的に宿の評判を下げる」と思っていたからだ。
幾日か経つと、宿の裏手からおじいさんの笑い声が聞こえてきた。彼は新湯に浸かりながら、「このお湯はまさに若返りの魔法だ!」と叫んでいた。しかし、その直後に彼の周りから何人かの宿泊客が倒れ込んでしまった。宿の公式な見解は「新湯の成分が体に合わなかった」として、彼らを急遽病院に運び込むことに。宿は一時的に賑わったが、その後は少しずつ客が減り始めた。
結局、宿の主人は「年寄りに新湯は毒」ではなく、「年寄りが新湯に釣られる姿」が危険だ、と学び取った。新たな噂はいつしか広まり、「新湯には注意」という看板が宿の入口に取り付けられた。温泉宿は、ボケたおじいさんたちを待ち受ける狡猾な罠となり、いつしかその冷笑が忍び寄るのであった。



