あらすじ
水は方円の器に随う
昔々、小さな町に「特殊な水」を提供する水商人が住んでいました。この水は、飲む人の性格を変える不思議な力を持っていました。商人は、どこででも吸収できるその力を使って、人々の間に小さな混乱を巻き起こしていましたが、みんなは彼の水を信じ、買い続けました。
ある日、商人は新しいアイデアを思いつきました。「こんなにも人間は、環境に影響されやすいのだから、特定の「器」を作ってやれば、もっと面白くなるだろう」と。そこで彼は、形の不揃いな器を大量に作り出し、その中に水を注いで販売し始めました。鎖のように連なる器は、飲む人々を次々に面白おかしいキャラクターに変えていきました。
しばらくすると町中は、愛想のよい人から意地悪な人、素直な人からウソつきな人まで様々な性格の持ち主で溢れ、混沌とした状況が続きました。しかし、誰も彼らの本来の性格を覚えておらず、商人の水によって新たな「自分」に満足しているようでした。今や町は、龐大なパーティーのような雰囲気になり、人々は自らの変貌に溺れ、楽しむことに全力を注いでいました。
しかし、商人は自分の水がもたらした影響に次第に恐れを感じ始めました。彼もまた、周りの人々同様に変わり果ててしまい、自分の本来の性格を忘れ去っていました。結局、商人の作り出した「水」は町の人々を変えただけでなく、彼自身もその影響を受け、ただの「水商人」から「水の器」に過ぎない存在へと成り下がってしまったのです。ウィットに富んだ変化が元の自分を奪ってしまったことに気づいたとき、果たして彼はどうすることもできませんでした。

