あらすじ
船頭多くして船山へ登る
ある日、村の人々は新しい舟を作ることに決めた。その舟は、村の沿岸を越え、名も無き島へ行くためのものだった。しかし、村人たちは全員が舟の進行を指図したがり、結局、数十人もの「船頭」が生まれてしまった。彼らはそれぞれ異なるアイデアを持ち寄り、舟の前方や後方、左や右、さらには上へも操縦しようとした。
「右に行け!」と叫ぶ者がいれば、「いや、左だ!」と応える者がいて、さらに「上だ、上だ!」と空を指さす者まで現れた。誰もが自分の案を押し通そうとし、舟は混乱の渦に飲み込まれていった。村人たちは、舟を「旋回艦」と名付けることにしたが、それはただの言い訳に過ぎなかった。
ついに舟は岸を離れることすらできず、そのまま動かなくなった。そんな中、「地味な一言」を口にした男がいた。「皆で力を合わせればできるって言ったけど、誰か一人でも操縦を任せればよかったのに」と言ったその瞬間、全員が黙り込み、彼を見つめた。誰もが自分の意見が最も正しいと信じていたが、結局はその船頭の無駄な数が彼らを行き止まりに連れて行ったのだ。
数日後、あまりに腹が減った村人たちは、静かに船の中で持っていた食料を一つずつ食べ始めた。そしてそれに気づいた船頭たちは、口を閉じ、目を逸らすしかなかった。結局、舟はそのまま海に漂い続け、「船頭多くして船山へ登る」という教訓を村人たちに叩きつける結果となったのだった。この雌伏の時間は、飲み込まれた食料と共に村にとって忘れられない銀行に記録されることとなる。




