あらすじ
子に過ぎたる宝なし
ある日、小さな町に住む平凡な一家に、大きな不幸が訪れた。父親のタケシは仕事を失い、母親のユミは病気がちで、子どもたちのために苦しい生活を強いられていた。そんなある晩、タケシは酒を飲んで帰宅し、つい口を滑らせた。「まぁ、子に過ぎたる宝なしとは言うけれど、今のうちに宝くじでも当たったら、子どもを送り出して自由になるかもしれん」と冗談めかして言った。
その言葉を聞いた子どもたちは、いつも明るく笑っていたけれど、この時は少しだけ暗い表情を浮かべた。長男のリョウは小声で「パパ、宝くじは運だから、どうせ当たらないよ」と返すと、周りの兄弟たちも黙り込んだ。タケシは「冗談だ、冗談。お前たちがいるからこそ、俺は頑張れる!」と無理に笑いを取り繕ったが、誰も笑えなかった。
数日後、偶然にもタケシは町の宝くじ売り場で大当たりを引き当てた。喜び勇んで帰宅するタケシだったが、家に着くと、母親のユミが病に倒れている姿を見て、心が折れた。「子に過ぎたる宝なし」のはずなのに、まさか「宝」が家族を引き裂く原因になるとは思いもしなかった。タケシは無力感に襲われ、またあの冗談を思い出した。
結局、金が入ったことで、ユミは高価な治療を受けることができた。しかし、その治療の副作用でユミは毎日苦しむことになった。そして、心の中でタケシは思った。「子どもたちは宝だ。でも、宝には手を入れたくなる欲望がある。手を入れるたびに、他の宝が失われるかもしれない」と。やがてタケシは、冗談にしなくてはいけない事実を受け入れるしかなかった。人生は時として、ブラックユーモアよりも皮肉な現実で構成されているのであった。




